Siluet Electro

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 ベラルーシ・ミンスク製のAEカメラ。その名もシルエット・エレクトロ。ロシアもんにしてはなかなかステキなネーミングである。ヤシカ・エレクトロを名前だけパクったのかもしれないが、シルエット・エレクトロの方が語呂がよいと思うし、何かを期待させるものがある。もしかしたら、カクカクの外観はやっぱりヤシカ・エレクトロを模倣したのかなぁ?とも思えるが、機構の方はどう見ても本家にはかなわないだろうな。私はヤシカ・エレクトロを使ったことがないから何とも言えないけど、今までの経験からいうと、もう間違いなくヤシカエレクトロの方がいいカメラに決まっているのだ。

 実際ずっと私はこのカメラを写真でさえ見たことがなく、海外のサイトでもその姿さえ見たことはなかった。ある日私がレディと呼ぶ女性から送られてきた送付可能リストを見て、その名前に興味を持ち、レディに手配してもらったものである。

 機構は、ピント目測、ビューファインダーカメラ、一丁前にAEである。もちろん、ほぼフルプラスチックといっても良いでしょう。付属品は例によって、ダサいビニールケースがついてくる。もちろん私は使わない。しかしながら、ロシアもんは時にとんでもなく便利なものがある。例えば、三脚穴にねじ込む方式のストラップ。これにもついていた。これは素晴らしい。これを日本でも売り出したら、LOMO LC-Aなどのストラップで悩んでいるユーザにバカ受けするのではないだろうか。

 レンズは一応ガラスでできている。上のイメージを見ていただくとおわかりいただけると思いますが、TRIPLET-69-3 4/40、三枚玉とわかる。つまりテッサーだろうな。その後の

69-3

は一体何を意味するのか不明であるが、ある種の性行為を表す意味でないことは間違いないだろう。この点については私にあまり深く追求しないで欲しい。

4/40

はもちろん、f4、40mm。35mmよりもちょっと標準レンズに近い。しかし、開放値がf4なので、被写界深度はある程度深い。こういう目測カメラは f2.8程の明るさがあってもなかなかピントを合わせることができずに苦労する。従って、普段使用するのはf5.6かf8あたりで、まぁ、開放値がf4あたりでも特に不満はない。もちろん、開放値の描写云々するような立派なカメラでないことは言うまでもない。

 実際使用した感触は、もう、何ともいいようがないくらい、とんでもないカメラである。だいたいウラ蓋ががたついており、いかにも光線漏れがおきそうである。しかし、光線漏れはなかった。どうしてか、これは不思議だ。

 しかし、フィルム巻き上げに問題があり、15枚ぐらいまで撮影したらそれ以上巻き上げレバーが滑って、フィルムを巻いてくれないのである。これは絶対に36枚撮りフィルムをいれたらダメ。しかも、コマの巻き上げがいい加減で、コマ同士重なっている部分が非常に多い。日本人の感覚としたら、ほとんど考えることができないいい加減な世界だ。 こんなものを堂々と英文の保証書付きでイギリスで売っていたのだから、そのツラの皮の厚さは半端ではないだろう。しかし、東西冷戦時代、ソ連軍は西側にとって大きな驚異だったが、カメラからしてこんな程度のものしか作れない国が、西側のハイテク兵器に果たして太刀打ちできるかどうか、ちょっと考えればわかりそうなものだが、まぁ、今はソ連は崩壊してロシアはただの張り子のトラ、ということがばれてしまったわけですな。

 最近中国がロシアから新式スホイ27戦闘機をライセンス生産する契約を結んだとか言って、驚異だとか南沙諸島の制空権がどうのだとか軍事筋が騒いでいるが、私から言わせれば、

「ロシア製の最新式戦闘機だろうが何だろうが、絶対に大したことはない」

と言いきれる。もちろん私はスホイ27戦闘機など乗ったことがあるわけはないが、あんたカメラでさえ西側とロシアではこんなに差があるんだよ。台灣に配備されている F-18の方がずっと性能がいいに決まっているって。第二次世界大戦が終わってから今までずっとロシア製の最新式はすごいとか言いつづけて煽っているけど、いつもチンケなもんなんだ。最新式のZENITがキヤノンEOS1を上回る性能を持っているとまじめに考えている人間はほぼゼロに近い思うよ。

 しかし、考えようによっては、こうローテクでがさつなものしか作ることができないソ連という存在は驚異だったかも知れないとも思える。カメラの世界で言えば、我々西側人が高度に電子化されたキヤノンEOSや、ニコンのF5(だったっけ?)でバッテリー・トラブルに怯えながら武装しているところを、東側人が、FEDやルビテル、とどめでシルエット・エレクトロなどというものであっさりと写真を撮ってしまっていたら、愕然とするだろう。私はそんな状況にあったら、戦意消失して降参してしまうに違いない。残念ながら、現在ロシア人はこういうイカしたロシアン・カメラを好まず、キヤノンやニコン、ペンタックスに大枚はたいて悦に入っている。その一方では、西側人である私のような人間が最新式の電子カメラには目もくれず、東側のカメラを手に入れて、写るだの写らないだの大騒ぎしたあげく、ロシア人に

「あんた、そんな壊れたようなゴミカメラで何するの?」

と鼻で笑われているのである。皮肉もここに極まれりの世界だ。

 このカメラは巻き上げに問題があるが、送られてきた数台のシルエット・エレクトロに実際にフィルムをいれて巻き上げを確認してみたら、この一台以外すべてうまく巻き上げてくれた。つまりいきなり私はババを掴んだのである。これだからロシアカメラというのは、何台も手に入れてみないとわからない。しょうがないから、この巻き上げの悪い一台は頑張って修理するか、燃えないゴミ行きになるかのどちらかである。もったいないけど、燃えないゴミ行きになる可能性が高い。

 さらにとんでもないのは、そんないい加減な機構のカメラでも、ちゃんと写っている、ということである。しかも、風景はどこを撮ってもロシアに変わる。これはいくら口で説明しても理解は不可能であるから、次のページからの作例をぜひ見ていただきたい。

 こういうとんでもないカメラに巡り会うと、私は田舎の親戚に久しぶりにあった時のように、懐かしくもあり、ちょっと鬱陶しくもあるという複雑な感情にとらわれてしまう。このように私のロシアカメラに対する気持は複雑だ。素直に「好き」だとはいえない。好きなんだけど、むにゃむにゃ...と延々と講釈が加わる。世の中には私のHPをみて、

「へぇー、ロシアカメラってよく写るんですねぇ」

と仰る向きもありますけど、

「写りゃしねーよ」

と言いたくなるときもあります。ホント苦労するんです。だいたい、自分で手間暇かけて現像して、やっと定着作業が終わったときに、おもむろにフィルムを取り出して確認する。このときに何も写っていないフィルムがあったりすると、もう体から力がわなわなと抜けていくのをハッキリ感じる。これは自分で現像作業をする人でないと絶対に理解できないと思う。白黒フィルムでもラボに出せば400円で済むのだけど、月間50本ほど撮影するシャッター中毒者には経済的に無理がある。やっぱり経済、そして精神衛生を考えたら、日本製の押すだけで写るカメラを使って、一月 4本ほど撮影して

「私の趣味は写真で、一ヶ月に4本も撮ります」

と堂々としていればよいと思う。ネガが段ボールいっぱいに詰まってしまい、新たな収納を模索しないといけないようになってしまったら、これは趣味ではなく一種の修行の世界である。それでいて、いつまでたってもバカ写真ばっかりとっている私のような人間は、いったい何なんだ?

 私をここまで追いつめるロシアカメラ、という話はこの際全く関係ないので、それでは作例をお楽しみ下さい。