Penti

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ペンティ

 私にとって、久々に刺激的なカメラかもしれない。まず、この色使いがかなり素敵だ。輝くばかりの金色に、黄緑色っぽい色のツートン。「黄緑色っぽい色」という持って回ったような言い回しは、別に気取っているわけではない。写真ではよくわからないかも知れないが、パステル・カラーではないのだ。東側製品特有のちょっとくすんだような色である。ここが大きなポイントだ。ただのパステルカラーだったら、いかにもオリンパスが作りそうなカメラだが、何といってもこれは旧東ドイツの製品だ。爽やかなパステルカラーで誤魔化されたら、腹が立ってしまう。

 ここで、「黄緑色っぽい色」の部分を赤、というか朱の色に塗り替えたら、たぶん中国系の人が喜んでしまいそうな極彩色カメラになると思う。さらに、

喜喜

みたいな字を金色の部分に入れたら、台灣や香港で大受けするだろう。

 それはさておき、自慢たらしく言いたいわけではないのだが、私もこれだけ色々なカメラを触っていると、多少変わったカメラでは全然動じなくなる。昔は Holgaやルビテル、果ては Lomo LC-Aを見て、

「これは私のカメラに対する固定概念を吹き飛ばす素晴らしいアイテムだ」

と感動したものだが、だんだん時がたつに連れ、シルエットエレクトロとか、ビリアとか、Agat、果てはエチュード(これはまだ紹介してなかったなぁ)、こういうさらに変なアイテムを触るようになり、かなりの免疫が出来てしまった。つまり感動が無くなるのだ。

 これはある意味、非常に悲しいことかも知れない。

 例えば、と例を挙げて説明すると、私が子供の頃、空き地などにひょっこりと放り捨てられている「週刊プレイボーイ」や「平凡パンチ」を見つけ、グラビアヌードを見たときの新鮮味といったら、これはそうそう簡単に言葉で説明できるものではない。友達といっしょになって、ページをめくるときのドキドキ、ワクワク感、まさに未知なるものへの畏怖に満ちていた。そして、ページをめくった後のすばらしさ、

「おぉぉ!」

と見るもの皆、歓声を上げて心から感動したものだった。感動などという、なまっちょろい言葉で説明できるものではない。心から熱いものがこみ上げてきて、実際涙を流していたものもいたような記憶がある。読者のみなさんで男だったら、絶対にこの様な素晴らしい思い出が心のどこかに残っていることだろうと思う。女性のみなさんには理解しにくいことであろうと想像するが、無理に理解していただく必要は全くない。

 しかし、歳を追うごとに、そういうものに目を触れる機会も増え、さらに世紀末的なエロ情報の氾濫により、「週刊プレイボーイ」や「平凡パンチ」程度で動じるような純粋な人間は今時かなりの奇特な存在、と言わざるを得ない。この程度では刺激が全くないから、どんどん過激なものに走るようになって、さらにエロ文化はきわどくなっていく。そして、見るものの方も、どんどん鈍感になり、終いには、もう何を見ても何の感動も刺激もない。子供の頃の「週刊プレイボーイ」みて感動していた方が、よほど幸せだったような気がする。

 関係ないけど、これ程エロに鈍感なのはアジアでは日本人ぐらいのものだろう。一度シンガポールにいたとき仲の良かった日本人と、怪しいものを探しに行こう、ということになり、名前は忘れたけど怪しそうなマーケットに行き、エロいものを扱っていそうなオッサンを探してみた。その中国系のオッサンときたら、怪しそうに周囲に目を光らせながら、恐る恐る一枚のヌード写真をとりだし

「ほらすごいだろう」

と言わんばかりの、自信たっぷりの顔で写真を手渡してくれたのだ。しかし我々が見たものは、ソフトポルノの雑誌から切り抜いたような、何ら変哲のないごく普通のヌード写真だった。今時中学生が下敷きにこの程度のヌード写真を挟んでいても不思議はない。

 我々は呆れてしまい、二人とも鼻くそをほじりながら、

「こんな子供レベルのじゃなくて、もっとアダルトなやつ無いの?」

と小バカにしながら訊いたが、オッサンはかなり自尊心を傷つけられたらしく、怒ったように我々から写真をひったくって、また胸のポケットにしまったのだった。かなり無礼な行動でシメてやろうかと思ったが、案外、オッサンは我々が大事な写真に鼻くそをつけるのではないか、と心配したのかも知れない。

 まぁ、何が言いたいのかというと、あまり慣れてしまうと新鮮味がへって、面白みが無くなる。それは人生をつまらなくているのかも知れない。何でも適度が一番。カメラも変なものばっかりつかっていると、感動を忘れてしまう。いけないことかも知れない。

 さてさて、このペンティであるが、旧東ドイツ「ヴェルタ・カメラ社」製のものである。

 この「ペンティ」という名前から何か連想することは無いだろうか?

 パンティを想像してしまった方は、これは私が言うのも何だが、もう如何ともしがたい。

 ちなみに私はペンを連想した。ペンといってもモンブランの万年筆ではない、オリンパス・ペンである。

 こう思った方は、ビンゴ。ペンティはハーフサイズ・フォーマット・カメラなのである。

 また、このフィルムの給送方式というのがちょっと変わっていて、下の写真をご覧いただくと、左手に見える棒が巻き上げレバーなのである。この棒をボディに押し込むとフィルムが給送され、シャッターもチャージされる。シャッターをリリースすると棒が飛び出してくる。面白い構造だ。

  

 何だか、フォクトレンダー・ヴィテッサのような感じだが、そこまで凝った仕掛けでもない。というのは、このカメラ、巻き戻しの機構がないのである。専用のフィルムマガジンを二つ使用して、左から右にフィルムをどんどん送っていくだけである。

 フィルムを使い切ったらどうするのか、というと、そこで裏蓋を開きフィルムを巻いた側のマガジンを取り出す。これだけである。

 あとは、そのままラボに持っていくなり、暗室に持っていってリールに巻き付けるなり、現像すればよい。巻き戻しをしなくてもよい、というのはある意味便利である。

 また、このカメラの専用フィルム・マガジンが、ちょっと変わった構造で、パトローネみたいになっているのだが、芯がない。またそのマガジンを開くこともできない。フィルムをマガジンに装填する方法はというと、マガジンの口からどんどんフィルムを送り込んでやるだけだ(もちろんこの作業は暗室での作業となる)。

 芯が無い分マガジンの中には空間が余分にあるから、かなり長い量のフィルムを詰め込めるような気がするが、ここで思い出して欲しいのは、これはハーフサイズ・カメラである。いつもハーフカメラの項で書いているのだが、フィルムが長いと、いつまでたってもフィルム一本撮り終わることが出来ない「フィルム無限地獄」に陥る。そうならないために、24枚撮りのフィルムをマガジンに移し替えることをお勧めする。長巻きのモノクロフィルムを詰め込めるだけ詰め込んでやろう、という浅ましい考え方はやめた方がいいと思う。きっと、無理をすれば、100コマ分ぐらい詰め込めてしまえそうだが、それをやって、100コマ撮ったとしても、人生が変わるわけではない。

 フィルム交換というのは、めんどくさいようで、それはそれで結構な気分転換になるのだ。たくさんフィルムを使う人はこの意味が分かっていただけると思うが、一年に1、2回フィルムを交換するだけ、という方には、ちょっと理解しにくいだろうと思う。そういう方はたいてい、一本のフィルムに海水浴の写真とスキーの写真がいっしょに写っていたりするネガを作る。ある意味素敵なネガだと思う。


 (2000年8月10日追記)

 このフィルムマガジンであるが、実はかなりフィルムを詰め込むのが難しいと言うことを発見した。100コマどころか、10cm詰めるのさえ苦労する。というのは、フィルムを押し込んで入れていくということは、マガジンの中でかなり抵抗が起こり、うまく入っていってくれないのだ。芯があって、それに巻き付けていくとなれば、芯を回して強引に引っ張り上げていくのだが、押し込んでいくというのはそうはいかないのだ。

 私は完全に当てが外れた。この気持を表現すると、田原俊彦の昔のヒットソングで

「こんなはずじゃぁ、なかったよね♪ あの夏の日の約束は♪」

みんな俊ちゃんって知っているか?たのきんトリオって、もしかしてイマドキ知っている人の方が少ないかも知れない。

 それだけ悲しいってことさ、、、。

 じゃぁ、「伊丹さちお」知っている人?、、、、有り難うございました。


  

 ちなみに、このラピッド・マガジンというのは、そんなに珍しいものでもない。ロシア系カメラでもよくあるのだ。あなたは気付いていないかも知れないが、Smena8MやAgat-18Kだと、このダブルマガジン方式で使えば、あの死ぬほど硬い巻き戻しをしなくてもすむ。SmenaやAgatのマガジンは汎用だから、大きなカメラ屋で売っている一本30円ぐらいの詰め替え用パトローネを買ってくれば、それが代用できる。

  

 さて、この化粧箱みたいなカメラのスペックは、というと、

レンズ:Trioplan f3.5/30mm

 「トリオ〜」名前の通り、3枚玉に間違いないだろう。別にチャンバラ・トリオを思いだしていただいても撮影に問題はないが、レッツゴー三匹を思い出したらちょっと問題があると思う。ちなみに私が一番好きなのは何といっても、牧伸二だ。しかし残念ながら、牧伸二はソロであり、トリオではない。

 ちょっとここで、カメラとは本当に関係のない話で大変恐縮なのであるが、牧伸二の公式サイトというものが存在するのだ、

http://www.jap.co.jp/makishin/

 私にとって、音符一つ読めない歌手とか、カッコ付けだけは一端の「ミュージシャン」と称する連中より、遙かに憧れの存在である。

 実は私は若かりし頃、ロックやらポップミュージックに全く憧れなかった(今でもだ...)。

「あんなものカッコばっかりでしょうがねぇな」

といいながら、ウクレレを誰にも内緒で買った。一人で適当な漫談をこしらえて、人目につかない場所で、弾き方も知らないウクレレをジャンジャンやりながら「一人漫談」をやって粋がっていた。青春の甘い一ページである。こんな私をあなたはバカにするかも知れないが、

「誰にも迷惑かけているわけじゃないから、いいじゃねぇか」

 今でも、牧伸二が流行の「ミュージシャン」に負けているとは思えないな。

 それはさておき、トリオターというのは、構成枚数が少ないので、抜けがよいから、カラーでもコントラストがよいはず。

シャッタースピード: B, 30, 60, 125

とちょっと頼りないが、絞りが最小で、f22というものだから、晴れた日にISO100フィルムを入れていれば、露出がカメラの性能を越えてしまう、ということはないだろう。

 ピントは目測、露出計などはついていない。大のオトナが、この手のカメラを使うときに、露出如きで大騒ぎするのは非常に見苦しいから、慎んでいただきたい。心配だったら、段階露出を切る。何といってもハーフサイズ・フォーマットである。心配しなくてもそうそう簡単にフィルムは終わらない。

 きっと、このページを読んでいらっしゃる方は、ここまで読んで、きっとこのカメラが欲しくてたまらなくなってきたと思う。そういう方々が、私のページに集まるようになっているのだ。

 そこら辺の人間が持っていないカメラというのは、それだけでとても素晴らしいカメラだ。いくら素晴らしいアイテムでも、そこら辺の人間がみんな持っている、となると、途端にダサいアイテムに成り下がる。LC-Aみたいなものだ。

 実際、私もいじくり回しながら、このペンティがとても欲しくなってきた。というのは、このカメラ、実は私のものではない。とある奇特な方が、私にぜひ使っていただきたい、と貸与してくださったものなのである。有り難いことである。

 結局このカメラが届いたその時点から、仕事を中途半端で放り出して、その日をこのページの作成に当たった。かなり呑気な人生ではある。せっかくだから、その場で持ち出して、撮影を始めようかと思ったが、よく考えたら免停中で、どこにも出掛けられない状態なので、作例の方はもう少々お待ち下さい。D-DAYは8月8日。

 それでは、幸運を祈る。

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