Moskva

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写真は Moskva4

 ソビエト帝國が誇る蛇腹カメラ。ドイツ、ツァイス・イコン製「スーパー・イコンタ」のコピーである。 製造期間は1947〜1956年、198,000台ほどの製造量であるそうな。

 レンズはもちろんソビエト帝國が誇るインドゥスタール-23、110mm、f4.5。フィルムサイズは 6×9しか受け付けてくれない。ちなみにMoskva4、Moskva5は 6×6でも使える。私はどちらかと言えば、6×6で使いたい。さらに贅沢を言えば、6×9というサイズはあまり使いやすいと思えないから、6×8がベストだと思う。ちなみに私が一番格好悪いと思うフォーマットは6×7だ。ペンタックス67とか、マミヤ7とか全く欲しいと思わないのはそのせいだ。しかし、これは全く個人の好みだろう。関係ないけど私はマミヤ6が欲しい。一度ピカピカのやつが 58000円で出ていたが、結局経済状況を考慮して、買うことができなかった。次回見に行ったら、当然の如くすでになくなっていた。思ったときに手に入れないとあとで後悔する、と言ういい例である。

 ちなみに 110mmというのは、6×9の標準画角であるそうだが(あれ、4×5じゃなかったっけ?...私はこんな事さえよくわかっていない)、やっぱり 110mmであるので、いい加減に構えるとすぐにぶれる。35mmカメラの標準 50mmのつもりで適当にシャッターを切っていたら、ぶれているショットが多かった。私はこういう大切なことをすぐに忘れてしまい、すぐにいい加減なことをやって、あとから気がつくことが多い。困ったことだ。しかも、このカメラを手に入れてから、私のモノクロ引き延ばし機は 6×7判までしか対応していないことに気がついた。どうしたものだろう。私が最悪に格好悪いフォーマットと思う 6×7判でしか焼き付けることができない。かといって、1:5比率の6×9判を、いくら好きだからといっても 6×6の正方形フォーマットで焼き付ける、というのもばかげている。困ったものだ。こういうとき、6x6アタッチメントが付属している Moskva5というのは非常にすぐれもんだ。

 私はずっと蛇腹カメラを狙っていた。何といってもこの手のカメラは折り畳み式だから、コンパクトで、持ち運びに便利だ。ペンタックス67は、持ち歩くことを考えただけで頭が痛くなる程重いが、これはたったの850gしかない。充分私のようなスナップショッターの実用機になる。素晴らしいことだ。そのかわりというか、もちろんAEとか、自動巻き上げとか、そういう機能は一切ついていないフルマニュアルカメラである。一応レンジファインダー。シンプルこの上ない作り、清々しくていいじゃないか。もちろん、小さくて軽いから女性にもお勧め。

 全然関係ないけど、私は一度 KIEV60TTLを「ウェストレベル・ファインダーをつければ、女性にもお勧め」とプロデュースしようとしたが、実際に女性にそのカメラのとり回し具合を確認したら、非常に使いにくいことがわかった。なぜなら、その女性は胸が大きく、ウェストレベルファインダーを覗くときに邪魔になるからだ。見えないことはないが非常に煩わしい、と。私は自分が男性、という都合だけで物事を考えていたのが失敗だった。そこで、

「ウェストレベル・ファインダーをつければ、胸が大きくない女性にはお勧め」

と苦肉の策とも言うべきキャッチフレーズを考えたが、こんな事をやっていると、そのうちひどい目に遭うだろうと思って、涙を呑んでやめにした。私の所では、女性というのは非常に重要なお客様なのだ。だいたい支払いがキッチリしていて有り難いことこの上ない。彼女たちは、私に

「もっと刺激的で、楽しいカメラを探してきて欲しい」

という、涙が出るほど有り難いリクエストを下さる。ちなみに彼女たちのほとんどはフルマニュアルカメラを全く怖がらない。単体露出計もたぶん使っていないと思う。変に余分な知識や、先入観がないだけ、すんなりとフルマニュアル・カメラ道に入り込めるし、マスターするのも速い。私は今、アシスタント・レディに

「女性が好みそうなカメラを全力で探すこと!」

と通達してある。私のアシスタントは女性で良かった。これからも女性しか雇わないつもりだ。

 さてさて、Moskva2であるが、私のところに転がってきた状態は外観はボロボロ、表面の皮は所々めくれてしまっている。しょうがないから、東急ハンズで350円の牛革を買ってきて、接着剤で貼り付けて修理した。しかし、手先が器用とは言えない私がやっていることなので、あまり見栄えは良くない。いつもロシア人はがさつだとか、いい加減だとか、散々悪口を言っている本人も実際にやらせてみるとロシア人と大差ないということに気がついた。まさに五十歩百歩で、ちょっと恥ずかしい。私はとりあえずカメラは実用主義だから、とりあえず外観は適当で良いということで、これで納得しておこう。まぁいつも私はこんな所で、適当に妥協してしまう。悪い癖だ。

 問題の機械とレンズであるが、これは見事にピカピカだった。大切に使われていたのだろう。そういう気迫がカメラから漂っている。私はこういう大切に使い込まれたカメラが大好きである。何といっても故障品が多いソビエト製であるから、ちゃんと使われたあとがあるということは、とりもなおさずちゃんと動いていた、という立派な証拠だ。使われたことがない新品よりもずっと有り難い。

 私は蛇腹カメラというのは、蛇腹がグニャグニャ前後してピントを合わせるものだとばかり思っていた。しかし、じつは違う。蛇腹は一度伸ばしたら、撮影行程で伸び縮みする事はないのだ。私にとって新たな発見だ。何でも経験してみないと分からないものである。ピント合わせはレンズ周りを回して決める、はずだ...。その前後運動わずか3mm程度。本当にこれで大丈夫なのだろうか?非常に心配である。標準レンズと言っても 6×9だから、110mmレンズがついている。しかも被写界深度表示を見ると結構被写界深度が広い。本当なのだろうか?私は90mmレンズを持っているが、こんなに被写界深度は深くないはずだ。私はかなり心配になってきた。でも、まさかウソを書いているわけもないだろうし、でもロシア製だし。ちなみに私の経験では被写界深度が深いレンズはあまりシャープではない、という因果を発見したつもりになっているが、これはどうだろうか?巷の評判を拾ってみると、Moskvaのインドゥスタールレンズは解像度が低いそうだ。そりゃそうだろう、何といってもクラッシックレンズだ。ちなみに私のローライフレックス・スタンダードもあまり解像度が高いとは言えないが、その柔らかみはとても気に入っている。

 6×9サイズというのは、ブローニー120サイズフィルムで、たったの 8枚しか撮れない。この巨大なフィルムフォーマットで何を撮るか、それは問題だ。ブローニーは35mmフィルムよりも経費がかかる。三脚を立てて、深い絞りで風景を撮るのは最適であろう。ポートレートも良い。しかし、ピント精度は近場では疑問なところもあるので、あまり絞りを開けずに単純な背景を選んだ方が良いかも知れない。

 一番不適当な使い方は、スナップショットだと思われる。第一フィルムがもったいない。しかし、私はどうしてもこのカメラでスナップショットをやりたかったので、結局カメラバッグにモノクロのブローニーフィルムを 15本入れて、スナップショットに挑んでしまった。初めはフィルムがもったいないので、躊躇してしまいなかなかシャッターを切れずにいる。ちなみにスナップショットで躊躇は禁物。あっ、と思ったときにシャッターを押せないようでは決定的瞬間はものにできない。結局、調子が出てきたらフィルム代なんてどっちでも良くなり、いつもの通り景気良くシャッターを押しまくり、一日で 10本ほどのフィルムを消費した。この調子だと持ってきたフィルムすべてを使い切るのは時間の問題だとして、撮影をやめて帰ってきたのだ。こうなるとフィルム代よりも現像をどうやって片付けるか、ということに頭を悩まさなくてはならない。

 また、1/125秒、f8程度の絞りではきちんとピント合わせをして、ちゃんとカメラを構えないと、シャッターショックは結構強く、被写界深度もレンズ周りに書いてあるほど深くないようだから、ピンぼけ・ブレ写真を大量に製造することになる。ハーフサイズカメラやLOMOでそういう写真を作るのなら別にかまわないが、6×9でこれではちょっと情けなくなる。8枚のうち半分がそういうショットだったら、泣きたくなるのは理解していただけると思う。

 こうなるとスナップショットというのは非常に難しい。私のデータだと ISO400フィルム使用で、日陰なら1/125秒、f8、日向なら、1/250秒、f16〜22なのだ。日陰だけでスナップするなら、もう一段増感したいぐらいだ。しかしそうなると日向の撮影が、このカメラのシャッタースピードでは追いつかなくなる。難しいところだ。昔のカメラというのはシャッタースピードに制限があるから、こういうところでしっかりと頭を使わされる。

 結論を言うと、このカメラはスナップショットがやりやすい。なぜなら、一眼レフのような鋭い攻撃的な雰囲気がないからだ。私は何度も書いているが、一眼レフでスナップショットほど無礼なものはないと思っている。ああいうカメラを不意に向けられたら、私だって非常にビックリして、もしそのとき FEDなどの丈夫な金属製カメラを持っていたら、それでカメラマンに一発お見舞いしようと考えるだろう。しかし二眼レフや、この手の蛇腹カメラを向けられても、あまり悪い気はしない。世の中に、こういうイキなカメラでスナップショットをしているカメラマンがいて、私を被写体にしようとしているのなら、私はお尻を出してサービスしても良い、と思っている。私にとってこれは特別サービスだ。

 それはいいけど、こんな事をやっている姿を、もしかして、自分が気がついていないだけで、自分が被写体になっている可能性は大きいのかもしれない。こんな不思議なカメラを持って街を歩いていれば、それだけで格好の被写体だろう。これは考えてみると非常に恐ろしいことだ。私が獲物を狙って夢中になっている姿を、知らず知らずの間に誰かに撮られてしまっているのである。言ってみれば、スリが獲物の財布に夢中になってしまっているときに、自分の財布をすられてしまったぐらい間抜けな話だ。

 焼く時間がないので、スキャナ+透過原稿ユニットを給料もらったその日にやってしまいました(泣)。これで私は今月どこにも飲みにいけないし、その前にアシスタントの給料を果たして払えるのかどうか怪しくなってきてしまいました。ごめんな、レディ...。

 それはいいけど、こういうカメラをもう一度発売してもらえないだろうか。最近は Lマウント人気で、安原一式の爆発的ブームを見てもそれはよくおわかりいただけると思う。ついでにこういうカメラを発売していただければ、絶対に売れると思う。何といっても折り畳み式だから非常にコンパクトで、軽い、持ち運びにも邪魔にならない。レンズ交換はできないけど、これはいわゆる中判コンパクトカメラとして使えば、かなり粋な存在だと思う。レンズは往年のものを再生産していただいても良いし、現代レンズをつけていただいてもそれも楽しいと思う。でもコーディングだけは現代技術を使っていただきたいところだ。

 実際いろいろな人とこのような話をして、ほとんどみんなが

「そんなカメラがあったら是非購入したい」

という意見だ。みんな一眼レフはすでに持っているだろうし、最新式を追い求めるのにも疲れているところだろうに違いない。メーカーのみなさんいかがなものでしょう?


追記:

 このレンズは当たりはずれがあるというが、私自身は5台ぐらい使ってみたが、特にハズレを引かなかった。知り合いのプロカメラマンがペンタックス67にモスクワ4のレンズを改造して装着して撮った写真が以下のものである。1000Wのストロボをバウンスさせてf11まで絞っているが、トーンもコントラストも素晴らしいものがある。現像も非常に上手く行っているんだけどね。ソビエト製オールドインダスターの実力をご覧いただきたい。


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