KIEV88TTL & KIEV60TTL, Arsat 80mm f2.8

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 ソビエトカメラを心から愛好する「愛すべき偏屈カメラマン達」の間で一番有名なのは、恐らくKIEV88TTLであろう。これはハッセルブラッド1600Fのコピーとして非常に有名である。これを知らないソビエトカメラ愛好家はモグリだから、一度 WEBをあちこち探し回って、このカメラに関する情報をいろいろと仕入れていただきたい。ちなみに私が書くようなことはあまり役に立つものとは言えないから、私のいっていることをそのまま信じるということは非常に危険である。

 今回、私はとうとうこの二つのカメラに手を出してしまった。ウクライナの卸元から試験的に買ってみたのだ。ちなみにKIEVの製品レベルというのは、日本人にとっては恐ろしいレベル、としか言いようがない。これは KIEV35Aで、ある程度懲りている。しかし、この二つの中判一眼レフの魅力には勝てずに、もう一度 KIEVに期待してしまった。ソビエトカメラの何がよいかといったら、何といってもレンズである。KIEV35Aも作例をみていただければ、理解していただけると思うが、非常によく写る。しかし、何といっても問題はボディの機構。ボディの機構が怖くて、なかなか手を出せない。でも、勝負事と一緒で、負けているうちは

「もう一回勝負すれば、勝てるのではないか?」

と甘い期待を寄せてしまう。やっぱり甘いのである。もちろん、また負ける。でも、勝つまでやめない。呆れたものだ。私はギャンブルをやらなくて本当に良かった。でもいつもやばいカメラを買ったり仕入れたりして、変なところで勝負している。これも困ったものだと思う。

 この二つのレンズには、Arsatという名称のレンズがついていた。ソビエトのレンズはインドゥスタール系とジュピター系が有名だが、今回のモノはどちらに属するのかわからない。たぶんゲリオスの系統つまりインドゥスタールだと思う。しかし、確証は持てない。

 ちなみに、日本で売られているこのカメラにはだいたいボルナー80mm f2.8というレンズがついているが、私の所は彼らとは全く違うルートでやってくるので、Arsatという日本ではなじみが薄いレンズとなった。もしかしたら、名前が違っているだけで、モノは同じかも知れない。そういうことはよくあることだ。

 レンズはコーティングを除いて、あまり心配はない、というよりも期待の方が先立つ。問題はボディである。恐らくとんでもないレベルだと思っていたが、やっぱりとんでもなかった。KIEV88に至っては、巻き上げ間隔が広すぎて、11枚しか撮れない。かたやKIEV60の方は、巻き上げ間隔が狭すぎて、一本のブローニーフィルムに 13枚も撮れている始末だ。これは私もビックリした。しかし、KIEV88の方はフィルムバックというモノを使うのが初めてなので、使い方がわかっていないだけかも知れない。これはもう一度挑戦の価値はある(後日談:私はKIEV88のフィルムバックの使い方を間違えていただけで、巻き上げはちゃんとしていた)

 また、KIEV60の方は、いつもコマの間隔が狭いかというと、そうでもない。フィルムによってはちゃんとした間隔で撮れているものもある。これはそのうちフィルムを巻き付けるクセとかを把握して、ちゃんと使えるようになるだろう。つまりあと数本のフィルムを使って悪戦苦闘をしないといけない、ということだ。日本製品や西側製品しか使ったことがない人には完全に想像できない世界だろうと思う。私は東側の製品というものはそういうものだと割り切ることにした。今の時代、東側製品、という名称は適切でないかも知れないが、まさに東側製品としか表現の仕様がない。

 また、この二つの製品には、TTLという名前が付いているが、TTLプリズムファインダーがついているだけで、基本的にはフルマニュアルカメラである。TTL測光のAEと勘違いしやすいが、決してAEではない。私はこれでよいと思う。この会社がTTLのAEカメラなど作ったら、どんなものが出来上がるか想像するだけで怖い。

 KIEV88は、私にとってあまり使いよいカメラだとは思えなかった。この日は、これら2台のカメラを持っていったが、KIEV88の方にはアイレベルのTTLファインダーを装着していったという理由もあるかも知れない。ちなみに中判一眼レフが二台となると、これは相当な荷物であるから、持ち物を減らすためにウェストレベルファインダーを持っていかなかった。もちろん、カメラバックなど恥ずかしいから持っていかない。ブローニーフィルムをポケットに10本ほど詰め込んで、カメラを二台、首から肩から下げて目だたないように(というのは無理なことだ)配慮してお出かけ。とにかくカメラを持った連中など、一般人にとっては「街の鼻つまみ者」程度の存在である、ということをよく理解する必要がある。いかにもそれっぽい格好など絶対に慎みたい。

 その一方で、KIEV60はウェストレベルファインダーを装着していったので、とても小気味よく撮影できた。使い勝手の良いカメラを持つとフィルムの減りが非常に早い。KIEV60のウェストレベルファインダーというものが、これがまた非常に良くできた代物なのである。とにかくユーザの配慮など全く考慮されていない東側製品ではあるが、これは珍しく、ユーザ第一主義となっている。一番感心したのは、スポーツファインダー。普通スポーツファインダーというのは、フレーミングするためだけのものである。しかし、このウェストレベルファインダーには、前面の壁を倒してスポーツファインダーを開けると、その壁の内側にミラーが仕込んであり、目の位置を 1cmずらせば、上下逆像ながらピント合わせができるのである。非常にわかりにくい説明で、何が何だかさっぱりわけが分からないかもしれないが、これは実際に使ってみるとよくわかると思う。

 しかし、KIEV60TTLは、ウェストレベルで使用することを強力にお勧めする。まず、ストラップの長さを調節し、ヘソの前あたりにカメラが来るように合わせる。これでカメラは非常に安定するし、下を見るだけでピント合わせとフレーミングが可能だ。ウェストレベルだから、当たり前だ、と思うかも知れないが、これは非常に重要な意味を持っているので、蛇足ながら書かせていただきたい。

 重要なのは、ウェストレベルでピント合わせとフレーミングをして、そのままシャッターを押すことができるのである。

 つまりアイレベルに持っていく必要がない。ということは、速射が可能だということである。

 スナップショットを前提に、普通のカメラの行程を考えてみよう。

1.被写体を発見する

.アイレベルまでカメラを持っていく

3.ピント合わせ(&シャッタースピード、絞りを決定する)

4.シャッターリリース(...カション)

 これがウェストレベルだと、

1.被写体を発見する

.首を下に曲げ、ウェストレベルファインダーを見る

3.ピント合わせ(&シャッタースピード、絞りを決定する)

4.シャッターリリース(...カション)

 スナップショットに慣れている方だとよくおわかりいただけると思うが、何が一番時間がかかりウザったいかと言うと、カメラをいちいちアイレベルに持っていって、フレーミングすることである。しかし、首を下に曲げるだけなら非常に楽だし速い。左右逆像という不便さはあるが、これはただ単に慣れの問題である。

 また、カメラの安定度もアイレベルとは比べものにならないほど高い。右手はボディを持ち、左手はレンズを持つのは同じだが、その両手で下の方向に力を掛ける。首にかかっているストラップがピーンと張ってカメラはとても安定するのである。これは、大砲を撃っているような中判一眼レフのミラーショックにうち勝つとても合理的な方法と言っても問題ないだろう。

 まさにウェストレベル・ファインダー万歳三唱だ。私はTTLファインダーなんていらない。

 じゃぁ、KIEV88でもウェストレベル・ファインダーを使えば同じではないか、と仰る向きもいらっしゃることだと思う。しかし、KIEV88の形状では、この素晴らしいウェストレベル・ファインダーがちょっと使いにくいのである。今ひとつしっくりこない、とそんな感じなのである。ウソだと思うのなら、実際に使ってみるとよくおわかりいただけると思う。

 で、今回は私の一押しは KIEV60TTL。マウントはペンタコン6と同じだったと思ったんだけどなぁ。今度詳しく調べておきます。誰か詳しい方が見えましたら、是非ご教示下さいませ。→後日談:スピゴットマウントというそうで、ペンタコン6、及びEXACKTA66と同じであるそうだ。今度お金ができたらシュナイダーレンズも買ってみようと思う。

 さて、今回のカメラは現行製品なので、レンズも現代レンズで、カラーを前提に作ってあることだろうと思う。モノクロはイマイチ特徴がない結果となってしまった。しかし、これは使うフィルムや現像方法で全く変わってくる可能性が高い。しかし、私は普段使い慣れていて、値段も安い ILFORD HP5 Plusしか使わないから、たぶんほかのフィルムを使わないだろう。HP5 Plusは、一度スーパープロドールを 1:1希釈して、とても良いネガを作ったことがあるが、温度と現像時間を忘れてしまった。

 中判、HP5 Plus、D-76原液

という組み合わせはどうもイマイチなんだよな。

 というわけで、今回の私のコメントはここまで、それでは、作例をお楽しみ下さい。